ホシボシキチョウ C

A 熊谷氏から頂いた幼虫を飼育したもの
B 薩摩半島で採集した成虫や幼生を飼育
C 「ホシボシキチョウは寒さに弱く、日本本土では越冬できない」は間違い

 

B 「ホシボシキチョウは寒さに弱く、日本本土では越冬できない」は間違い

 図鑑などによると「ホシボシキチョウは寒さに弱く、日本本土での越冬は無理」と書かれているが、幼虫は寒さには弱くないことが野外飼育でわかった。正しくは「食草のカワラケツメイが冬は枯れてしまうため、日本本土での越冬は難しい」とすべきである。
 きっかけはもう15年ほど前になるが、ホシボシキチョウの調査で福田先生を車で案内中に「ホシボシキチョウは日本では越冬できないんでしょうかね?」と尋ねたら、「できるかもよ、だって中国大陸にもいるんだから」という返事だった。
 この言葉がずっと気になっていて携帯電話が進歩した近年、スマホで簡単に世界中の気温分布が見られるようになったので見てみると、ホシボシキチョウがいるとされる中国中南部、特に内陸部は冬は日本本土の本州並にとても寒いことがわかった。
 こんな寒い所でどうやって生きているのだろう、冬も食草があるのか?、季節によって移動しているのか?、と色々考えたが実際に冬場に屋外飼育してみるのが一番だろう、と飼育の機会を狙っていた。そして
 
 2020年鹿児島県北薩地方でホシボシキチョウの飛来発生地2カ所を見つけ、12月3日現地(薩摩川内市天辰町)から持ち帰った中齢幼虫を庭のカワラケツメイに放してみた。
 12月になり庭の最低気温は5℃以下の日が増え、庭のカワラケツメイも枯れ始めてきている。その後も、死ぬことなく少しずつ成長を続け、翌年2月10日に蛹化、2月28日に羽化した。
2020年12月13日
屋外越冬中の中齢幼虫
 
 2021年も9月以降、北薩地方の3カ所(薩摩川内市天辰町、薩摩川内市東郷町斧渕、薩摩郡さつま町二渡)でホシボシキチョウの飛来発生を確認、累代飼育を行った。
 12月7日、天辰町の産地からやがてはカワラケツメイが枯れて死んでしまうであろう越冬中の幼虫数頭を持ち帰り、累代中の幼虫と一緒に、車庫上のベランダに設置した温室内で飼育を行った。温室と言っても日当たりは良いが雨風よけの効果しかなく、朝は外気温と同じくらいまで寒くなる。
 夏に種子から育てたカワラケツメイの鉢植えに幼虫を放し、野外越冬飼育を行った。 
 
2021年
11月17日1蛹化→12月7日♀羽化→12月19日熊谷さんへ
12月11日1蛹化→熊谷さんへ
12月25日1蛹化(A)→1月30日♂羽化→2月26日死亡
12月末、熊谷さんより12月19日?羽化の♂を預かる→1月21日死亡 
2022年1月29日
羽化間近のホシボシキチョウ蛹
 
2022年
1月3日1蛹化(B)→2月4日♀羽不伸で羽化
1月9日、熊谷さんより♂を預かる→2月1日死亡
1月11日、AとB蛹を一時室内に取りこむ
2月3日最後の幼虫が前蛹に→2月10日蛹化→3月4日♀羽化 
2022年3月4日
羽化間近のホシボシキチョウ蛹 
 
 期間中、0℃以下になる日もあったが、幼虫は落下死亡することなく成長した。

 残念ながら♂と♀が出会うことなく累代が絶えてしまったが、冬場の野外でも食草さえあれば越冬羽化できることがわかった。
2022年3月5日
アブラナで吸蜜する♀

 

A 熊谷氏から頂いた幼虫を飼育したもの
B 薩摩半島で採集した成虫や幼生を飼育
C 「ホシボシキチョウは寒さに弱く、日本本土では越冬できない」は間違い