キタキチョウ B

A 熊谷氏より送って頂いた幼虫を飼育
B キタキチョウの食性を調べる

 

B キタキチョウの食性を調べる
 2008年4月〜2011年3月まで奄美大島宇検村名柄に単身赴任。
 2008年9月15日、鹿児島の自宅庭のメドハギに付いていたキタキチョウ1幼虫を採取。奄美に持ち帰りメドハギで飼育していたが、9月24日終齢途中で死んでしまった。
 9月18日には熊谷氏から鹿児島産のキタキチョウ卵も届いたが、幼虫が孵化する前に食草が腐って孵化しなかった。
 
  10月6日、娘の運動会で鹿児島に帰る。9月に熊谷氏から送ってもらったキタキチョウ卵を孵化させられなかったので、自宅近くの若葉町から七窪で古びた3♂(夏型2・中間型1)と3♀(夏型)を採集。ミナミキチョウと区別するために後翅裏面に赤マジックで印を付けて奄美で採卵することにした。

 10月9日、鹿児島から持ち帰った3♀は、2♀は翌日の寒さと雨に打たれ死んだが、1♀がメドハギに多数産卵している。でも、ヒメクマヤナギには産んでいない。

 10月13日、飼育舎には鹿児島産キタキチョウ2♂1♀と累代飼育しているミナミキチョウ2♂がいて、区別できるようキタキチョウ後翅には赤マジックで印を付けてある。
 キチョウ類の食草としてはハマセンナ、ヒメクマヤナギ、メドハギ、カワラケツメイ、エビスグサ、ギンネムを入れてあり、ハマセンナにはミナミキチョウの中齢〜終齢幼虫が10頭以上育っている。キタキチョウ♀はメドハギにばかりに多数産んで、どんどん幼虫が孵化してきている。クサネム2株掘ってきて1株は庭に置き、もう1株はキタキチョウ採卵用に飼育舎に入れる。
 熊谷氏よりキタキチョウがハマセンナ、メドハギ、ギンネムに産卵し、モクセンナには関心は示すが、エビスグサ、ナンバンサイカチ、ハネセンナ、大きなネムノキでは卵は見られないというメールが来た。 
2008年10月12日
メドハギ上のキタキチョウ卵
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2008年10月12日
メドハギ上のキタキチョウ卵
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2008年10月13日
メドハギ上のキタキチョウ卵
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2008年10月12日
メドハギ上のキタキチョウ初齢幼虫
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2008年10月13日
メドハギ上のキタキチョウ2齢幼虫
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2008年10月13日
メドハギ上のキタキチョウ2齢幼虫
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  10月15日、キタキチョウがギンネムにも数個産んでいるが、クサネムにはまだ産んでいない、なぜなんだろう。キタキチョウは生息地で代々食べている食草でないと産まないのでは?、代々食べている食性が遺伝的な体質(系統)となっていて、他の食草を与えても産まない(育たない)のかもしれない。鹿児島のキタキチョウ♀を採った若葉町・下伊敷七窪ではメドハギとネムノキはあったが、クサネムやヒメクマヤナギなどは見かけなかった。
 10月16日、飼育舎のキタキチョウとミナミキチョウがいつも同じ場所をねぐらにしている。今日はレモンの葉裏に3頭寄り添い、残り2頭は単独で近くの下草の葉裏にいる。地上から20cm位の葉裏に両種寄り添うように寝ている。朝日が差すと自分から飛び立つ。(後翅に赤い印があるのが鹿児島市産キタキチョウ)

 今日もクサネムには産卵していない。
 10月19日、鹿児島のキタキチョウ♀は、まだクサネムには産んでいない。そればかりか、メドハギで孵化した幼虫がまた育っていない。前にも同じような事があった、奄美のメドハギは本土のキタキチョウには合わないのか?
2008年10月26日
メドハギ上のキタキチョウ終齢幼虫 
2008年10月26日
死にかけている中齢幼虫 
2008年10月26日
メドハギ上のキタキチョウ終齢幼虫 
2008年10月28日
キタキチョウ終齢幼虫 
2008年10月28日
キタキチョウ終齢幼虫  
 11月11日、鹿児島のキタキチョウがメドハギで3頭蛹化。
 12月10日、飼育舎ではミナミキチョウ秋型と、羽化したキタキチョウ秋型が10頭ほど成虫越冬中。
 ミナミキチョウのハマセンナやクサネムへの産卵も見られたが、葉が硬いのか幼虫は育っていない。 
2008年11月10日
キタキチョウ蛹 
まとめると
 今回の飼育では、鹿児島産のキタキチョウは奄美ではメドハギによく産卵し、ギンネムにも数卵産卵したが、他のクサネムなどの食草には産卵しなかった。また、今回もメドハギを食していた幼虫が途中で死に羽化したのは3頭だけだった。
 熊谷氏宅ではハマセンナ、メドハギ、ギンネムにも産卵しているので、奄美の食草が鹿児島市産のキタキチョウには合わないのか、採集地によって産卵する食草に(遺伝的な)偏りが見られるのかもしれない。今後も機会があれば飼育を継続したい。 

 

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