ミナミキチョウ C

A ミナミキチョウ幼虫と♀を採集して採卵・飼育
B 羽化したF1を累代飼育
C ミナミキチョウの食性を調べる

 

C ミナミキチョウの食性を調べる
 2008年4月〜2011年3月まで奄美大島宇検村名柄に単身赴任。
 2008年9月21日夕方、宇検村部連から名柄へ帰る県道脇の昔の小さな休耕田後と思われる場所で、シロノセンダングサで吸蜜する黄色いチョウがいた。念のために採るとミナミキチョウのようで、側にはハマセンナ幼木とクサネムが一緒に生えていた。
 ここでハッと先日の福田先生からの「アメリカクサネムにも産むはず」というメールを思い出し、調べるとハマセンナには卵が多数付いており、クサネムにも卵や幼虫がおり、他のクサネムを探すと同じように幼虫や卵、2蛹や果実の種子を食べた後も見つかった。
 このクサネムの幼虫はハマセンナなどを食べるのか持ち帰り、ミナミキチョウとキタキチョウの食性を調べてみることにした。クサネムは小葉の幅が2mm以上あるので、アメリカクサネムではなく普通のクサネムのようだ。

 9月24日、採取したクサネムのミナミキチョウ幼虫を、ハマセンナ(幼虫大と小)、メドハギ(幼虫小)、ヒメクマヤナギ(幼虫大)、ギンネム(幼虫大)、シマエンジュ(幼虫大)に分けているが、見るとハマセンナとギンネムは食べており、メドハギは若齢は食べずに死んだが中齢が食べた後があり、他のには食痕がない。

 
9月27日、ヒメクマヤナギとシマエンジュは食べることなく死に、ギンネムとメドハギを食べていた幼虫も頭部後ろの背中が黒くなって昨日死んだ。結局、生き残って元気なのはやはりハマセンナを食べている幼虫だけになった。
2008年9月21日(部連〜名柄)
ハマセンナ上の卵
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 2008年9月21日(部連〜名柄)
ハマセンナとクサネムが一緒に生えている
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2008年9月21日(部連〜名柄)
クサネム上の蛹
2008年9月21日
クサネムを食べる終齢幼虫(側面)
 2008年9月21日
クサネムを食べる終齢幼虫(背面)
2008年9月21日(部連〜名柄)
クサネムを食べる中齢幼虫
 
 9月23日、阿室校裏山にチョウが沢山いるという同僚からの情報を得て行ってみた。どんな所でどんなチョウがいると言うのか、行ってみると畑や田んぼの休耕地みたいな所で山裾に沿って歩いてみた。スジグロカバマダラ1♂がいるぐらいで珍しい種類は多くない。でもびっくりしたことが一つ、沢山のミナミキチョウがいた。(翌年10月にわかったことだが”沢山のチョウ”とは池のミズヒマワリに群れるマダラチョウのことだった)
 ここの休耕地にはクサネムが多数生えており、これで発生しているようだった。ハマセンナは見あたらない。更にはギンネムにも卵が多数付いていた。どうやらクサネムとギンネムで発生しているようだ。♀は黄色みが薄く秋型か、♂と簡単に見分けがつく。交尾個体も数組いた。♀を採って小屋に放したら、ハマセンナにちゃんと多数産んでいるのでミナミキチョウに間違いはない。
 9月27日、23日に阿室から採ってきた1♂1♀を飼育舎に放してあるが、ハマセンナには多数産んでいるが、ヒメクマヤナギ・エビスグサ・カワラケツメイ・メドハギには全く産んでいない。
  2008年9月23日(阿室)
ギンネム上の卵
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  2008年9月23日(阿室)
ミナミキチョウ交尾
 
 9月23日に熊谷氏から「ミナミキチョウの幼虫体毛は長い」という指摘があり写真に撮ると、確かにミナミキチョウは等間隔に長い毛が認められる。
 
 9月27日、庭の熊谷氏からいただいたエビスグサにミナミキチョウがやってきて関心を示している。よく見たら数株に卵が10個ほど付いていた。さらに、シマエンジュにも2個、ナンバンサイカチ幼木にも4個付いていた。もちろんハマセンナには多数、でもギンネムとカワラケツメイには0個。
  2008年9月27日(自宅庭)
エビスグサ上の卵
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   2008年9月27日(自宅庭)
エビスグサ上の卵
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   2008年9月27日(自宅庭)
シマエンジュ上の卵
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  2008年9月27日(自宅庭)
ナンバンサイカチ上の卵
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   2008年9月27日(自宅庭)
ハマセンナを食べる若齢幼虫
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   2008年9月27日
ハマセンナを食べる中齢幼虫 
 
    2008年9月27日
ハマセンナを食べる終齢幼虫
    2008年9月27日
終齢幼虫と若齢幼虫
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  9月26日飼育舎で1♂が羽化し3頭飛び回っているが、9月27日11:15なんと目の前で交尾した。やはり複数回交尾するようで12:25には終わっていたので、6月の交尾と合わせて、交尾時間は60〜90分といったところか。 
     2008年9月27日(11:15〜12:25)
ミナミキチョウ交尾
 10月13日、庭のナンバンサイカチ幼木とエビスグサのミナミキチョウ卵は終齢になり、今朝は1蛹化した。ギンネムとシマエンジュにも9月は産んでいたが、幼虫がいないばかりか、最近は若葉もあるのに産んでもいない。
     2008年10月12日(自宅庭)
エビスグサ上の中齢幼虫
     2008年10月12日(自宅庭)
エビスグサ上の前蛹
 
     2008年10月13日(自宅庭)
エビスグサ上の終齢幼虫
      2008年10月13日(自宅庭)
ナンバンサイカチ上の終齢幼虫
     2008年10月13日(自宅庭)
エビスグサ上を食べて蛹化
 
       2008年10月13日(自宅庭)
ナンバンサイカチ上の卵
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 飼育舎のハマセンナとエビスグサにもミナミキチョウの中齢〜終齢幼虫が10頭以上いる。
       2008年10月13日(自宅庭)
クサネム上の終齢幼虫
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  10月16日、ハマセンナには終齢幼虫が多数蛹になろうとしている。庭のエビスグサには帰宅すると4日連続ミナミキチョウが止まっていたが、最近は見かけない。
        2008年10月20日(自宅庭)
クサネム上の蛹 
        2008年10月20日(自宅庭)
クサネム上の終齢幼虫 
        2008年10月20日(自宅庭)
ナンバンサイカチ上の終齢幼虫
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2008年10月23日(自宅庭)
クサネム上の蛹 
2008年10月29日(自宅庭)
クサネムの羽化間近の蛹 
2008年10月20日
羽化間近の蛹 
 10月26日ミナミキチョウ秋型が羽化し始め、11月3日には秋型同士が交尾。
 夕方庭のエビスグサでミナミキチョウがまた睡眠をし始めた。
2008年10月26日
ミナミキチョウ蛹(側面)  
  2008年10月26日
ミナミキチョウ秋型♀羽化  
2008年10月26日
ミナミキチョウ蛹(背面) 
  2008年11月3日
ミナミキチョウ秋型交尾  
 2008年10月26日(自宅庭)
ミナミキチョウ蛹
 11月11日、ミナミキチョウ秋型が10頭以上羽化。庭でも羽化して産卵し始めている。
 12月10日、飼育舎ではミナミキチョウ秋型と、羽化したキタキチョウ秋型が10頭ほど成虫越冬中。ミナミキチョウのハマセンナやクサネムへの産卵も見られたが、葉が硬いのか幼虫は育っていない。
まとめると
1、ハマセンナ、クサネム、エビスグサ、ナンバンサイカチでは正常に羽化まで成長できると考えられる。
2、ギンネムとシマエンジュは途中で死んでしまうことがある。
3、ヒメクマヤナギとカワラケツメイ、メドハギには産卵しない。
という結果になったが、時期的なことなども関係していると思われる。

 

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